ミールラウンドって何?
ミールラウンドは「食事観察」のことで、実際に提供した食事を食べている患者さんや利用者さんのところへ出向き摂取量や嗜好、適切に食べられているのかをチェックしてすることです。ミールラウンドを行うことで、食事摂取状況の把握や課題を見つけることができ、一人一人に合った栄養管理を行うことができます。
令和3年介護報酬改定から栄養マネジメント強化加算を算定している介護施設では低栄養リスクの高い入所者の方には週3回以上のミールラウンドが義務化されているよ。
医療では今のところ義務はないけど栄養管理をするにはミールラウンドは欠かせない業務です。
ミールラウンドって具体的に何するの?
カルテだけでは知りえない情報を収集する
カルテだけではその患者様の情報を十分に知ることはできません。そこで栄養士は直接患者様と接して実際の食事状況の確認をする必要があります。
ミールラウンドは時間が限られており、1食分で30分程度しかありません。複数人ミールラウンドを行う場合には事前準備が欠かせません。以下のような項目を確認しておきましょう。
主病名、基礎疾患、検査データ(Alb、Hb、TG、T-CHO、HbA1c、CRPなど)、発熱や炎症の有無、排泄状況、前日(食)までの食事摂取量、摂食状況などです。
食事時間はあっという間に終わります。回る順番やラウンド中に確認しておきたいと、聞きたいことをすぐ聞けるようにメモしておきましょう。
提供している食事の確認
食事自体が適切に提供されているかも確認する場でもあります。検食で問題ないと判断された食事であってもその個人にとって適切かは食べてもらうまでわかりません。
調理が適切に行われ、喫食に問題はないか(キザミ方は適正か、ミキサーの調整、食材の硬さなど)確認していきます。もしも調整不足な厨房と話し合い食事の改善を行います。
もちろん個別対応には限界があります。すべてに対応してもらうのはほぼ不可能なので出来る範囲を確認して対応をお願いします。
高齢化に伴い、状況は複雑化しています。それに伴い個別で対応しなければいけないことも増えています。栄養士は病棟と厨房のチューニングをうまく行っていく必要があります。
食事摂取量が少ない人はなぜ食事摂取量が少ないのか
ミールラウンドは患者様の情報を得るだけでなく、現在提供中の食事がその患者様にとって適切かどうかを確認できる場でもあります。入院時は全粥が適切だったが、現在は米飯まで形態をアップできる、義歯が上手くあっておらず、副食は刻んだほうが食べやすいなど提供している食事の不具合に気づくことができます。
食事形態があっていないのか、減塩食の為食欲がわかないのか、病態の影響か、服薬のせいなのか、理由は様々です。ミールラウンドはカルテだけではわからないことを見つけるきっかけになります。
ミールラウンドから情報収集をし栄養管理を立てていきます。その患者様にとっての課題や優先的に解決しなければいけない問題を栄養士の視点から解決していく必要があります。
低栄養が問題の患者様がいるとします。しかし、減塩食がゆえに摂取量が低下している低栄養の患者様に対して減塩食は中止した方がいいかもしれない。その他にも食事で十分に栄養補給できていなければ補食を付けたり、食思改善で食事だけで十分に栄養量が満たされている患者様の以前つけていた補食を外したりと柔軟に対応していくことができます。
毎日の訪問で小さな変化に気づくことができ、適正な食事提供が行えるようになります。
間食をしていて食事量が少ない患者様がAさんとBさんがいます。
しかし、この2人の食事摂取量が少ない理由は同じとは限りません。
Aさんは間食をしているから食べられない(満腹)
Bさんは間食のように手軽に食べられるものしか食べられない(食思低下)
このような違いも区別していかなければなりません。
なかなか時間がありません。
ミールラウンドが大事なのはわかったけど、他の業務もやることが多くて時間がありません。
厨房や献立作成を兼務していたり、外来や電話対応やその他の雑務をしていたりするとなかなか食堂や病室まで行く時間がないという栄養士も多いのではないでしょうか。
しかし、ミールラウンドをすること計画書を書くネタをたくさん発見することができます。
患者様だけでなく、他職種とも情報交換ができる場なの積極的にミールラウンドを行いたいところです。
いざ、ミールラウンドへ
主に喫食時間に対象者様のところへ訪問し、食事の摂取状況を観察します。
ラウンド中は主観的情報と客観的情報を
主観的情報:患者様の意見や主張を中心とした情報
「食事は食べられていますか?」「お口に合いますか?」などと声をかけ、その時の体調や食思、嗜好を確認します。食欲はあるか、いつも決まったものを残食していないか、提供量は適切かなどチェックするポイントはたくさんあります。また、食事形態の適正評価、摂取不良など聞き取りします。
患者様と話す機会や頻度が増えると、遠慮して言えなかったことも少しずつ言ってもらえるようになってきます。患者様の中には大人数のいる食堂で食べるのが好きな人もいれば、自分の部屋で食べるのを好まれる人もいます。患者様の性格や特徴、キャラクター性を掴んでいきましょう。
注意するポイントは必要以上に聞き過ぎないことです。食事中なことと、しゃべるのが苦手な方や自己開示したくない方もいるので聞き取りは端的に聞くようにしましょう。
客観的情報:患者様おかれている状況や環境などの情報
その患者様にとってのテーブルの高さや食器の使い勝手、姿勢、身体機能(自分で食べられるか、介助が必要か)、手は問題なく使えるか(腕の力など)、スプーンは適切に使えているか、歯はあるか、義歯の有無、食べるスピード、一口量、食べこぼし、食事に対する意欲、精神状態、認知機能レベル、覚醒度、嚥下機能についての情報を収集します。
客観的情報をみることは患者様自身が感じている問題以外の問題を見つけるヒントになります。
環境の整備や服薬の調整を依頼するなど行っていきます。
ミールラウンドは患者様を見に行くだけではない
チーム医療はますます必要とされ、それぞれの専門性も必要となっています。
栄養士の仕事はご飯を作るのではなく、カラダを作るのが本来の役割です。
個人の栄養管理を適切に行い、予防や治癒を行うのが仕事です。栄養士は積極的に患者様や他職種と交流し栄養士がいることや栄養管理が重要なことを主張しなければなりません。
ミールラウンドをしていると他職種とも情報交換ができ、適切な治療やケアに繋げられます。
最初は難しくても何回もミールラウンドをすることで話しやすくもなってきます。一人で考え込まず他職種とも連携を行っていきましょう。
終わりに
栄養士の仕事は非常に多いのでミールラウンドが十分に行えない状況の人も多いと思います。しかし、ミールラウンドは仕事の効率化を進めるものであり、患者様や他職種への栄養士がいるという安心感にもつながります。少しでも患者様のもとへ行ける栄養士が増えればと思います。
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