管理栄養士の業務で最も大切なことは対象者の栄養状態を把握することにあります
栄養状態により、身体の予後なども変わってくることから正しい栄養状態の評価が必要になってきます
その中でも栄養状態の評価に最も用いられる「アルブミン:ALB」に解説していきたいと思います
血清アルブミンとは
アルブミンとは血漿タンパクの中でも最も多く存在し、60%を占めているタンパク質で栄養状態を評価する指標として最も使われる検査項目です
多くの場合にはアルブミンが低下すれば栄養状態の低下、上昇すれば栄養状態の改善と評価することができます
実際に低栄養のリスク判定にも3.6g/dl以上は低リスク、3.0g/dl未満は高リスクの判定になります
しかし、アルブミン値の変動は栄養状態以外にもおこるので一概に「低い=低栄養」ではありません
アルブミン値は正しく読み取らないと誤った栄養評価をしてしまいます
ここからはアルブミン値が変動する要因について詳しく解説していきます
「血清アルブミン量=流入量ー消費量」で決まる
アルブミンは血中に入る量と出ていく量で変動していきます
食事でタンパク質を摂取すると消化管で消化吸収されアミノ酸になった後、肝臓へ運ばれアルブミンに合成されます
合成されたアルブミンは血中に入ると浸透圧の維持やホルモンや脂肪酸の運搬を行います
熱発や組織の合成の際にはアルブミンが組織や供給されることで血中からアルブミンが出ていきます。また、尿や出血などからもアルブミンは流出します
これによりアルブミン値の値が変動してきます。
アルブミンが低いとどうなるのか?
アルブミンには2つの役割があります
- 浸透圧の維持
- 物質の運搬
アルブミン1gで約20mlの水分保持可能で血中の水分量を調整しています
また、薬物、ホルモン、ビリルビン、脂肪酸などと結合して各組織へ運搬行います
低アルブミンによって血中の水分が体腔内へ移動して浮腫(むくみ)が発生したり、各組織への栄養や薬、ホルモンの運搬が不十分になってしまいます
アルブミンが低下する5つの要因
食事摂取量低下
→タンパク質(アミノ酸)量が不足で合成できない
食事摂取量(タンパク質)が不足することでアルブミンを作る材料不足になってしまっている状態
いわゆる、食べないから低栄養になる状態です
食事摂取不良でのアルブミン低下には貧血が合併していることが多くあるので、ヘモグロビン値(Hb)の値も確認するとよいでしょう
消化吸収障害
→肝臓まで十分に供給されず合成できない
食事は十分に摂取できているのにアルブミン値が低い、低アルブミンになるような病態もない場合は消化吸収障害により、アミノ酸が十分に肝臓にまで達していないことがあります
消化吸収傷害の疑いがある場合は便の状態や代謝異常などがないか確かめる必要があります
肝臓障害
→合成量が低下
肝機能障害がある場合はアルブミンの生成ができない状態にあります
生成ができないということはアルブミンを十分に供給できていないということです
肝硬変や肝炎などの病態がないか確認します
炎症、熱発などによる異化亢進
→アルブミンの消費が激しい。合成<消費
炎症や熱発により組織のタンパク質が消耗されていくと、それを補うためにタンパク質であるアルブミンが組織に供給されます
すると血中アルブミン値が消費され、低アルブミンになることがあります
CRPや熱発の有無を確認します
ネフローゼ症候群
→流出量が増加
ネフローゼ症候群は腎臓のろ過機能が障害をきたし、本当は再吸収していたものを尿として排出してしまう病態です
必要以上のアルブミンが尿として排出されるため、尿アルブミンが高値であると、腎機能障害が疑われます
胸水、浮腫
→体腔内へのアルブミンが流出
アルブミンには水を抱え込む性質があり、1gで20mlの水を保持します
何らかの原因でアルブミンが体腔内へ漏出してしまうと、胸水や腹水をきたします
逆に血中アルブミンが低いことで血中水分が体腔内へ移動して胸水や腹水の増悪をもたらしてしまいます
アルブミン値が正常値でも低栄養?
アルブミンは正常値だからといって安心もできません
脱水により、血液の濃縮があるとアルブミンも高く示される場合があります
低栄養の疑いがあるのにアルブミンが高値の場合は、尿素窒素(BUN)、Na、Clも脱水により高値となることが多いので確認するとよいでしょう。
血液検査以外にも脱水により起こる症状(口渇、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、嘔気)などをあわせて見て脱水と判断し、水分摂取量と尿量のチェック(in-outバランス)などの対応をとりましょう。
アルブミン値は過去のもの?
アルブミン値の数値は実は採血した日の21日前の状態のものです
これはアルブミンの半減期(血中の中で半分になる期間)が21日だからです
なので3週間前までは食事摂取が良好であった人が1週間前からほとんど食べなくなった場合、
検査値がそれほど低いと、安心はできません
3週間前の状態が反映されていることを忘れないようにしましょう
アルブミン値だけに頼らない栄養評価
アルブミンは栄養状態を評価する1つの指標です
アルブミンだけでなく、血液検査ならヘモグロビンやコレステロール値、体重の増減、食事摂取量、皮下脂肪厚、脱水や皮膚の湿潤なども栄養状態を評価するうえで大切な指標になってきます
正しい栄養状態を知ることで正しい栄養計画を立てることができます
様々な症例があることを念頭におき、多面的に栄養状態の評価を行っていきましょう
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